PROFILE

「そんなものは和紙ではない。伝統ではない。」これは、私が24歳の頃、会社を設立して新しい手法で作品を作り始めたころに、和紙職人さんから投げかけられた言葉です。銀行員から転職し、和紙の商品開発会社での事務経理を経て、独学で手漉き和紙を未来へ、世界へと広げていこうとしていた私は、その言葉をきっかけに、伝統とは何か、仕事の方向性はこれでよいのかと、深く考えました。
原点に戻って考えてみると、1300年前、和紙を漉く手法は「革新」だったはずです。その革新的な技術が、長い年月、人の役に立ち、変化しながら受け継がれ、現代において「伝統」と呼ばれているのです。つまり伝統と革新は対局にあるものではなく、革新的に生みだしたものを数百年後も人の役に立つように進化させていくことが重要なのだと気づきました。
そこで、私は、越前和紙の工房において職人さんの伝統的な技術に現代の用途や機能を与えて、伝統を未来へ繋ぐ方向性と、京都の自社工房で独自の新たな技術を使って革新を興し、その革新を未来の伝統に育てていくという、2つの方向性に仕事を分けました。伝統産業にとって、伝統を未来へ、革新を伝統へというどちらの方向性が欠けても、発展はないのではないかと思っています。
30年余りを経て、私は、美の探求には革新的な技術への挑戦がいかに大切なことかと実感しています。固定概念から抜け出した技術や表現方法を模索して、不可能に挑んでこそ、伝統は未来に拡がっていきます。私は、時代を超えて人の心に響き、時代の要望を満たす和紙作りに挑戦し続けたいと考えています。
堀木エリ子
- 1962.1
- 京都府に生まれる
- 1980.4
- 住友銀行入社
- 1984.10
- (株)紙屋院へ転職(事務/経理担当)
- 1986.9
- (株)紙屋院 閉鎖
- 1987.7
- SHIMUS設立
- 1988.7
- 小田章ビル SHIMUSショールーム開設
- 2000.4
- (株)堀木エリ子&アソシエイツ設立
- 太秦工房および太秦ショールーム開設
- 2014.8.
- 吉忠ビル 御池ショールーム開設
職歴
- 2003.4 〜 2004.3
- 京都光華女子大学 客員教授
- 2006.6 〜 2008.3
- 京都精華大学 客員教授
- 2009.4 〜 2018.3
- 大阪工業大学 客員教授
- 2010.3 〜
- 公益財団法人国立京都国際会館 理事
- 2013.4 〜
- 京都美術工芸大学 客員教授
- 2013.11〜 2020.3
- 京都府 参与
- 2015.4 〜 2017.3
- 嵯峨美術大学 客員教授
社会における活動等 / 審査委員
- 1999〜
- 「美濃和紙あかりアート展」審査委員
- 2007〜2019
- 「京都文化ベンチャーコンペティション」審査委員
- 2008〜2022
- 京都・花灯路「創作行灯デザインコンペ」審査委員
- 2012〜
- 「京都女性起業家賞」審査委員
- 2013〜2015
- 「京都建築賞」審査委員
- 2014〜2017
- 「京都景観賞」審査委員
- 2015
- 「テラダアートアワード」審査委員
- 2021~
- 「日本伝統工芸再生コンテスト」審査委員
社会における活動等 / 委員
- 2006〜
- 「文化力創造懇話会」委員
(京都府府民労働部文化芸術室) - 2009〜
- 「古典の日推進委員会」アドバイザー
(京都文化交流コンベンションビューロー) - 2017〜2018
- 「これからの文化行政検討会議」委員
(京都府文化スポーツ部文化芸術振興課)
教科書・教材
- 「Genius English CourseⅠ Revised」 P.136〜P.149 (2008年/大修館)
- 「グローバル ビュー地球村 日本語能力試験1・2・3級教材」P.54,55(2008年/地球村出版)
- 「美術2・3上」 P.23(2012年/日本文教出版)
- 「美術2・3下」 P.29(2012年/光村図書)
- 「子どもに伝えたい和の技術②和紙」 P.29 (2015年/文渓堂)
- 「美術資料 京の美」 P.5(2018年/秀学社)